これをクリアしないと妊娠しない ~その7~

みなさんこんにちは、Jです。
12月に入り、もうめくるカレンダーがなくなると、急に気持ちが焦りますね。
私達の治療院も、大掃除の日と年末年始の休業日は決めたのですが、日常業務もなかなか忙しく、気持ちだけが早くも「師走」な感じです。
さて、今回は、シリーズでお送りしている「これをクリアしないと妊娠しない」の、7回目です。
妊娠するための条件11段階をもう一度おさらいしておきましょう。
1.卵胞が成熟する
2.排卵する
3.卵管の先端(卵管采 らんかんさい)が卵子をキャッチする
4.排卵したあとの卵胞の膜から黄体ホルモンが出る
5.子宮内膜がふかふかな、着床しやすい状態になる
6.精子が膣内に射精される
7.頸管粘液が潤沢になっている隙間を伝って、精子が子宮内に侵入する
8.子宮から卵管へと精子が進んでいく
9.卵管の端で精子と卵子が出会い、受精する
10.分割を繰り返しながら卵管を下り、子宮にたどり着く
11.胚盤胞という状態まで育った”卵”が子宮内膜に着床する
今回は、このうちの
6.精子が膣内に射精される についてお話していきます。
前回も同じテーマでしたが、今回も男性不妊について考えていきます。
ぜひパートナーと一緒に読んでみてくださいね!

6.精子が膣内に射精される 前回は、膣内に射出ができない、あるいはEDなどで挿入自体ができないケースを扱いましたが、正常に膣内に射精しているのに、実は精子に問題がある場合もあります。
精子の数が少ない、精子が全くない、膀胱に逆流していて、膣内に射出されないなどのケースがあるのです。
精液の中身の問題は、検査してみるまで分かりません。
射出されるものすべてが精子ではなく、精子は精液の中の大体1%くらいしか入っていないので、「ちゃんと出ているから大丈夫」というわけではないのです。
精液の検査を嫌がる男性もいるのですが、不妊カップルの半分は男性に問題があると言われているので、赤ちゃんが欲しければ、男性も一度は精子の検査をしてもらう必要があります。
仮に問題があったとしても、精子の問題と男らしさの評価は全く別物です。精子の良し悪しで男性の価値が決まるわけではないのです。
それに、精子に問題があった場合、ART(体外受精などの高度生殖医療)を使えば、赤ちゃんを授かることはむしろかなり簡単と言えます。
検査を渋っている間に女性が年齢を重ねてしまい、妊娠しやすい時期を逃してしまうことのほうがずっとずっと深刻な問題です。
男性には「男らしく」勇気をもって検査に臨んでほしいと思います。
さて、では、どこで精子の検査を受けるかですが、泌尿器科でも調べてくれます。
念のため、事前に病院に電話して「精子の検査をしてもらえるでしょうか?」と打診しておくと良いと思います。
ただ、現実的には女性側の検査も必要ですから、最初から不妊専門のクリニックに行くほうが2度手間にならなくて済むと思います。
クリニックによっては採精室があって、そこで採取できる場合もありますし、朝自宅で採取して病院に持っていく場合もあります。
精子の評価は
●液量
●精子濃度
●精子数
●運動率
●異常率
●白血球数
などで行ないます。
その数値次第でAIH(人工授精)から始められるかどうか、あるいはARTでないと妊娠が期待できないかが分かります。
万が一、精液の中に精子が一匹もいないとしても、今はARTの技術が進んでいるので、精巣上体からや(MESA)精巣から(TESE)直接精子を回収して、顕微授精(ICSI)で受精させることが可能です。
完全な精子(しっぽがはえたおたまじゃくしみたいな外観)でなくても、そこまで育つ前の段階の、しっぽのない「精母細胞」がたった1個でも回収できれば、顕微授精で受精は可能です。
言葉を変えれば、男性不妊は「一匹でも精子がいれば大丈夫」なので、結果を出すのが簡単なのです。
女性側の原因は複雑で、いろいろな要素がからみあっているのですが、それに対して男性の問題は単純だと言えます。
ただ、クラインフェルターなど、遺伝子の問題などで精子が一匹もいないという場合(クラインフェルターのかたでも精子が採取できる場合もあります)は、残念ながらその男性の赤ちゃんを授かることはできません。それが今のところ、男性不妊の限界といえるでしょう。
いずれにせよ、男性側の問題の場合、結論が出るのが早いのがせめてもの救いです。
このように、男性側に問題がある場合、ARTによって妊娠が可能になります。
逆にいえば、女性には何も問題がなくても、受精させるために卵を体外に取り出さなければなりません。
つまり、主な治療を女性が受けることになり、ホルモン剤を飲んで気持ち悪くなったり、注射を打ちに病院に通ったり、採卵するのに痛い思いをしたりする場合もあるわけです。
「おれのせいで痛い思いをさせてごめんな」
「あなたこそ、結果を聞いてショックだったでしょう。でも、私、あなたの赤ちゃんを授かるために頑張るね」
「何を協力すればいいか良く分からないから、してほしいことがあったら何でも言ってくれよ」
というようなパートナー同士の会話ができれば、ご夫婦の絆は治療を始める前より一層強くなります。
ところが、そんなふうに理想的にいかないこともあるのです。
男性は「自分のせいで妻に痛い思いをさせている」というのが辛すぎて、自分が情けなくて、口を閉ざしてしまう。
男性からいたわりの言葉がないと、女性側は、「私はどこも悪くないのに、彼のせいで病院に通って、痛い思いをするのは私ばっかり」と不満がたまります。彼を責めてもしょうがないと分かっているのに、治療がつらくても、彼に頼れない。
お互いがむっつりと口を閉じて、うつむいてしまう。
これでは絆が深まるどころか、溝が深まってしまいます。
まずは気持ちを言葉に出しましょう。
そこからスタートです。
原因がどちらにあっても、子作りは二人でするものです。
治療の結果はどうあれ、お二人で乗り越えてきた苦難こそが、ご夫婦のかすがいになってくれることを祈っています。

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