これをクリアしないと妊娠しない ~その8~

みなさんこんにちは!Jです。
今年のカレンダーも、後ろから数えたほうが早くなりましたね。
明日は、治療院を一日閉めて大掃除です。
あまり寒くないと良いんだけど・・・
さて、今回は、シリーズでお送りしている「これをクリアしないと妊娠しない」の、8回目です。
妊娠するための条件11段階をもう一度おさらいしておきましょう。
1.卵胞が成熟する
2.排卵する
3.卵管の先端(卵管采 らんかんさい)が卵子をキャッチする
4.排卵したあとの卵胞の膜から黄体ホルモンが出る
5.子宮内膜がふかふかな、着床しやすい状態になる
6.精子が膣内に射精される
7.頸管粘液が潤沢になっている隙間を伝って、精子が子宮内に侵入する
8.子宮から卵管へと精子が進んでいく
9.卵管の端で精子と卵子が出会い、受精する
10.分割を繰り返しながら卵管を下り、子宮にたどり着く
11.胚盤胞という状態まで育った”卵”が子宮内膜に着床する
今回は、このうちの
7.頸管粘液が潤沢になっている隙間を伝って、精子が子宮内に侵入する についてお話していきます。
自然妊娠を望んでいるカップルには特に大切なことですので、ぜひ読んでみてくださいね。

7.頸管粘液が潤沢になっている隙間を伝って、精子が子宮内に侵入する 頸管粘液(けいかんねんえき)とは何か、の説明から始めます。
頸管とは、子宮の口のところで、膣に向かって突っ込まれたような形になっているところを指します。
子宮は、首のある壺みたいなもので、口を下にして筒に立てたような構造になっています。筒は、膣のことです。
壺の首の部分が頸管で、そこから出る粘液が頸管粘液です。
性交して、精液が膣に射出されると、精子はこの頸管を昇っていきます。
ところが、この頸管は、精子を簡単に通さない関所でもあるのです。
排卵時期以外は、頸管粘液はボソボソした、粘りの少ない性質で、それが少しだけ分泌されている状態です。
おまけに、膣内と同じく酸性になっていて、アルカリ性の精子にとっては厳しい環境なのです。
ですから、排卵期以外のときに頸管を超えて、その先の子宮へ、さらに卵管をさかのぼって卵子と出会う長旅に耐えられる精子はほとんどいません。
仮に根性のある精子が卵管采の先まで到達したとしても、そこに排卵したての卵がいなければ、2~3日くらいで命尽きてしまいます。
ところが、排卵期には、この頸管粘液が一転して「ウエルカム」状態に変化します。
頸管粘液は、非常によくのびる(指にとって伸ばしてみると、15cmくらいのびます)とろっとしたものに変わるのです。この粘液は弱アルカリ性で、むしろ射出された精子の栄養剤になってくれるのです。
でこぼこ道が一転、つるつるの道になったかようなもので、精子は子宮までの道をさかのぼりやすくなります。
この関所をたくさんの精子が越えられるかどうかが、妊娠できるかどうかの分かれ目になります。
頸管粘液は、排卵期にトイレで力んだりした時に、卵の白身のようなトロッとしたおりものとして出てくる場合もあります。
「おりものが多いのかな?」と不安になるかたもおられるかもしれませんが、むしろタイミングを取るべき時を教えてくれる嬉しいサインなのです。
この頸管粘液が一番多いのは排卵日当日ではなく、排卵の数日前と言われています。
排卵日の数日前のほうが精子が遡上しやすいわけですから、自然妊娠を狙いたいのでしたら、排卵日ではなく、排卵日の前に性交するほうが良いといえます。
ただ、基礎体温の最低日が排卵日とは限りません。卵子が受精能力を持つのは排卵からわずか12~14時間ですから、そろそろ低温期も終わるかなという頃から、高温期に移った頃までに繰り返しタイミングをとるほうが確実です。
では、「私は卵の白身のようなおりものが出たことがない気がする」というかたは妊娠が難しいのでしょうか?
逆に「私は、そういうおりものが排卵期に出るけれど、妊娠しないのはなぜ?」というかたもおられるかもしれません。
もし、避妊をやめて1年経っても妊娠しないのであれば、婦人科で一度「ヒューナーテスト」(フーナーテスト)を受けることをおすすめします。
間接的に精子の様子も検査できるので、男性が精子検査を受けたくないとごねている場合にも便利な検査といえます。
これは、排卵期にパートナーと性交し、翌朝(ベストは当日早朝の性交)に病院に行って、頸管粘液の中に精子がどれくらいいるかを調べるテストです。
生きた精子がたくさん確認できるほど、頸管粘液の状態が良いということです。
もし、動きが非常に悪い精子しかいなければ「抗精子抗体」という性質の頸管粘液かもしれません。
これは、女性側の免疫反応が精子を敵とみなして攻撃してしまう症状です。
生きた精子は確認できるけれど、数が少ないという場合は、粘液の量が少ないのかもしれません。(そもそも男性側の精子が少ないのかもしれませんから、そうなると精子の検査は必須です)
ヒューナーテストの結果が良くなければ自然妊娠は難しいと言われていますが(可能性がゼロということではありません)、その場合は人工授精(AIH)で問題を回避できます。
人工授精は、体外受精とよく間違えられるのですが、この2つは全く違います。
人工授精は、採取した精子を洗浄して子宮の中にカテーテルで送り込むだけです。
つまり、頸管の数センチだけをパスさせるだけのものですので、その先は自然妊娠と同じです。
卵を体外に取り出したり、受精させることもありません。
費用も2万円程度で、一般の産婦人科でもやってくれるところがたくさんあります。
年齢的にも余裕があって(30歳くらい)なかなか妊娠しないというかたは、まずはこの検査から受けてみることをおすすめします。
年齢的に時間があまりないというかたは、一般の産婦人科ではなく、不妊治療の専門病院で同じ検査を受けられるほうががよいでしょう。
ただ、まずは人工授精から始めたいという場合、人工授精もやってくれる不妊専門病院を選んでくださいね。
中には人工授精はやっていないところもあるので、事前のチェックが必要です。
女性は、時に精子を拒み、たまに精子を助け、数千以上の精子の中から、強運な精子たった1つを選んで迎え入れます。
本当に、妊娠って奇跡の連続です。
厳しく、ときに優しい女性の神秘に感動しつつ、この回を終わります。

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