人が体熱を生産(=産熱)するには
・ホルモンの作用
・栄養素の摂取による作用
・筋肉の動きや内蔵の代謝による作用
・交感神経の活性化による作用
などが関わっており、
前回はそのうちの2つ
「ホルモンの作用」・「栄養素の摂取による作用」
について取り上げました。
今回は
残りの2つ、
「筋肉の動きや内蔵の代謝による作用」・「交感神経の活性化による作用」
について説明します。
筋肉、内蔵が熱をつくる 〜動いても動かなくても〜 運動すると体がポカポカする とか
急に寒くなると体がガタガタ震える
という経験はどなたにでもあると思います。
どちらも骨格筋が収縮をしたことによって作られる熱です。
前者は 生活動作や運動でできる熱
後者は 寒さから身を守る為の、不随意にふるえてつくる熱(ふるえ産熱)
と考えます。
それに対して、
寒さの中でも、筋肉の収縮に頼らないで
脂肪組織を利用して代謝を高めて熱を作ることをします。
これはふるえ産熱でないことから「非ふるえ産熱」
と呼ばれています。
脂肪組織のなかでも、「褐色脂肪」という組織がおもに活躍。
褐色脂肪の細胞組織は
肩甲骨の間や胸の間、首の周り、
心臓や肝臓、腎臓の血管の周りに存在しています。
おもに新生児に多く存在し、
成人するとあまり使われなくなる。とされてきました。

鹿の子模様とよばれる 褐色脂肪細胞の組織写真(Dr.mercola Blog より)
しかし、最近の研究では、
成人でも寒冷ストレスに晒されると
褐色脂肪細胞の活性が高まり、熱を産生するということが
分かってきました。
特に、
肥満者でなく細身の人、高齢者より若年者、血糖値が正常値の人
により多く存在するようです。
といっても成人では40gほどしかなく、
熱産生の中心的存在にはなり得ません。
仕組みとしては、
寒さに晒されると、視床下部が生命の危険を察知して、
交感神経を介してノルアドレナリンが褐色脂肪細胞へと放出されて、
褐色脂肪細胞内にある、熱産生遺伝子とUP1とよばれる脱共役タンパク質が
活性化して熱を作り始める。
ということになりますが、
ちょっと難しいですよね。
褐色脂肪といわゆる脂肪と言われる「白色脂肪」は
これも最近の研究で、
全く出自が違うという事が分かりました。
褐色脂肪細胞は骨格筋から由来したものだそうで、
骨格筋自体、安静時にじっとしていても産熱をしているということも、
この褐色脂肪の研究から分かってきました。
これはもうミトコンドリアくらい細かい話になるので、止めておきます
「交感神経の活性化」というと、
これは熱を逃がさないようにするからだの仕組みの事です。
寒さに触れると「鳥肌(さぶいぼ?)」立ちません?
あれです。
毛が逆立って、体毛と皮膚の間に空気層を作り、天然のベールを作る。
それと同時に、血管がギュッと収縮して、外へと熱が放出されないように
防ごうとします。
いずれも交感神経系の活性化で起こる現象。
毛に関しては、人よりも獣のほうがより分かりやすい現象と言えるでしょう。
冬には私もシロクマの様なモコモコした毛が欲しいです。
また、人間のからだは、
じっと安静にしていても一定の体温を保とうとする
基礎代謝というものがあります。
基礎代謝のエネルギーは
心臓や肺の機能、肝臓や腎臓の循環機能、筋肉、神経の活動に
使われますが、
それよりもずっと多くの割合を
人の体温調節に割り当てています。
基礎代謝のおよそ7割が体温保持の熱量に使われているのです。
知らない所でいろいろな組織が働いて
私たちの体温が下がらないように一定に保ってくれる。
じつに不思議な事ですが、
今も私たちの体では粛々と行われているのです。
それがなぜ、
低体温という状況に陥ってしまうのか。
それは、産熱に拮抗する「放熱」という生理現象が
大きく関わるとはいえ、
これまでに示した産熱の仕組みが
上手く機能しないという問題が
現代の社会、最近では子どもの年代にも広がって来ているのです。
メインタイトルのもう一翼
「低体温」についてはまた次回
取り上げて行きます。